8月公開例会

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8月公開例会「今、経営者が知るべき『生成AI』の最前線とは?」

日時:2025年8月20日19時 場所:みしまプラザホテル

講師

株式会社デジライズ 代表取締役

(一社)生成AI活用普及協会評議員

茶圓 将裕 氏

多数の実績を持つ生成AI専門家。難解な技術を経営に直結する形で解説している。

茶園氏は冒頭、少子化による労働人口の減少について言及し、2040年には約1100万人の労働力が不足するとの推計を示した。そのうえで、人材確保が難しくなる中で企業が成長を維持するには、生産性を高めることが不可欠であり、その切り札としてAIの活用があると述べた。特に中小企業にとっては採用難が一層深刻になるため、既存社員が1.5倍から2倍の成果を発揮できる環境づくりが必要であり、AIはそのための重要な手段になると強調した。

続いて世界の状況に触れ、アメリカや中国の大企業では会議の議事録作成をAIに任せるなど、AI活用がすでに「義務化」に近い形で進んでいると紹介した。一方で、日本企業の導入は遅れており、上場企業でも本格的に活用しているのは一割程度にとどまるという。その理由として、詳しい人材が不足していること、知識がないために導入できないことが大きいと説明した。

茶園氏は、生成AIとは従来の検索型AIとは異なり、新たに文章や画像、音楽、動画を生み出せる点が特徴だと解説した。特にChatGPTは、試験に合格できるほど高い知識を持ち、文章作成や資料作成など幅広い分野で利用できる。ただし「知識は豊富だが経験不足の新入社員のような存在」であるため、適切に指示を与えることが重要だと述べた。

AIツールは「汎用的なもの」と「専門特化型」に大別されると説明された。ChatGPTやMicrosoft Copilot、Google Geminiなどの汎用ツールは、メール作成、資料作成、議事録要約など広範な業務に対応できるため、まず導入するべきはこうした汎用ツールであると述べた。その後、特定業務に特化した専門ツールを補完的に用いることで、さらに効率化が進むとした。

講演では実際にAIを利用したデモンストレーションが行われた。メール作成では、依頼内容に応じて丁寧な返信文やカジュアルな文面を瞬時に生成する様子が示された。議事録作成では、会議の音声をリアルタイムで文字起こしし、その内容を要約して整理する方法が紹介された。提案資料の作成では、顧客情報を入力するだけでスライド形式の資料が自動生成される例が示された。営業研修では、自社資料をAIに学習させ、仮想の顧客役として営業ロールプレイを行い、AIが質問やフィードバックを与える仕組みが紹介された。また契約書チェックの場面では、AIが契約条項を分析し、リスクのある部分を指摘し改善案を提示する方法が示された。

茶園氏は、こうした活用例はすべて特別な開発を行わなくても、既存のAIサービスを導入することで実現可能であると述べた。月額数千円程度の投資で、業務の三割から六割を効率化できる場合があるとし、まずは手軽に導入できる汎用ツールを全社員に付与することが有効だと語った。

さらに、AI導入は経営者自身の姿勢が不可欠であると強調した。社員の一部が詳しいだけでは効果は限定的であり、組織全体で一定割合が使えるようになって初めて生産性が高まるという。そのため、トップが旗振り役となって推進する必要があると述べた。AIに業務を任せることで、人は人にしかできない付加価値の高い仕事に集中できるとまとめた。

今回の講演では、労働人口の減少という社会的背景を踏まえながら、生成AIの基本的な仕組みと具体的な活用方法が紹介された。メール、議事録、資料、営業研修、契約書チェックといった実践的な事例を通じて、AIが企業経営において重要な役割を果たし得ることが示された。茶園氏は、AIを使うかどうかではなく、いかに使いこなすかが今後の企業の成長を左右すると結び、講演を締めくくった。

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